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家屋は、走行中の車は、どっち?
航空局の“解釈”から見る「第三者の上空」

ドローンの飛行ルールを学んでいると必ず目にするワードがあります。「第三者」「第三者の上空」もその一つです。


このコラムでは今年6月10日に改正され、国土交通省航空局より公開された「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(以下、「運用解釈」)を踏まえ、改めて「第三者」「第三者の上空」について確認したいと思います。

遵守事項に追加された「飛行前確認」

飛行空域とその周辺の状況とは?

航空法の対象となる重量100g以上のドローンは原則、第三者の上空は飛行できません。理由は、航空法でドローンを飛行する際に「飛行前確認」が求められているためです。


飛行前確認は航空法の一部改正(2019年)の際、もともとあった「飛行の方法」に追加された4項目のひとつで、ドローンを飛行させる際の遵守事項となっています。飛行前確認の中身を調べると「第三者の上空は飛行できない」にたどりつきます。
 

【航空法】

第132条の86 無人航空機を飛行させる者は、次に掲げる方法によりこれを飛行させなければならない。

1 アルコール又は薬物の影響により当該無人航空機の正常な飛行ができないおそれがある間において飛行させないこと。

2 国土交通省令で定めるところにより、当該無人航空機が飛行に支障がないことその他飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させること。

3 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するため、無人航空機をその周囲の状況に応じ地上に降下させることその他の国土交通省令で定める方法により飛行させること。

4 飛行上の必要がないのに高調音を発し、又は急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと。

 
上記の第2号が飛行前確認の規定になります。さらに「国土交通省令の定めるところにより」をたどると、確認しなくてはいけない5項目の中に「飛行させる空域及びその周囲の状況」という項目があります。


【航空法施行規則】

第236条の77 法第132条の86第1項第2号の規定により無人航空機を飛行させる者が確認しなければならない事項は、次に掲げるものとする。

1 当該無人航空機の状況

2 当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況

3 当該飛行に必要な気象情報

4 燃料の搭載量又はバッテリーの残量

5 リモートID機能の作動状況(第236条の6第2項各号に該当する飛行を行う場合を除く。)


上記第2号の「当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況」について、運用解釈は具体的な例として2点挙げています。


①飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認

飛行経路の直下及びその周辺の落下分散範囲に第三者がいないことの確認


このように飛行前確認の具体例として「飛行経路の直下及びその周辺の落下分散範囲に第三者がいないことの確認」と定めています。


長くなりましたが、以上のことからドローンは第三者上空を飛行させてはいけないことになります。(航空法で規制されている特定飛行のうち、立入管理措置を講じないで行う「カテゴリーⅢ飛行」を除く)


立入管理措置を講じたうえで特定飛行を行う「カテゴリーⅡ飛行」の許可・承認の審査要領でも、「第三者の上空を飛行させない」と記されています。


【無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)】

4-3 無人航空機を飛行させる際の安全を確保するために必要な体制

4-3-1 次に掲げる事項を遵守しながら無人航空機を飛行させることができる体制を構築すること。

 (1)第三者に対する危害を防止するため、原則として第三者の上空で無人航空機を飛行させないこと。

「第三者」ってどんな人?

直接・間接の飛行への関与がポイント

第三者かどうかは、ドローンの飛行に直接的・間接的に関与しているかいないかがポイントになります。


運用解釈では第三者について以下のように定義しています。


6.第三者に関すること

(1)「第三者」について

航空法 132条の87などで規定する「第三者」の定義については、以下のとおり。

「第三者」とは、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者をいう。次に掲げる者は無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与しており、「第三者」には該当しない。


①無人航空機の飛行に直接的に関与している者

直接的に関与している者(以下「直接関与者」という。)とは、操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員とする。

②無人航空機の飛行に間接的に関与している者

間接的に関与している者(以下「間接関与者」という。)とは、飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者とする。

a)操縦者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している。

b)間接関与者が、操縦者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の注意に従うことが期待され、操縦者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。

c)間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。

 

「第三者」に該当しない例

・操縦者や補助者などドローンの運用に関わるスタッフ

・映画の空撮における俳優やスタッフ

・学校等での人文字の空撮における生徒等

「第三者上空」の定義

移動中の車両はNG

一方で、「第三者上空」については以下のように定義しています。


(2)「第三者上空」について

「第三者上空」とは、(1)の「第三者」の上空をいい、当該第三者が乗り込んでいる移動中の車両等(3.(7)に例示する車両等をいう。以下同じ。※1)の上空を含むものとする。この場合の「上空」とは、「第三者」の直上だけでなく、飛行させる無人航空機の落下距離(飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離)を踏まえ、当該無人航空機が落下する可能性のある領域に第三者が存在する場合は、当該無人航空機は当該第三者の上空にあるものとみなす。

※1.自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等


つまり、自転車やオートバイ、自動車、バスなど移動中の車両の上空も第三者上空に含まれます。


運用解釈では以下のように第三者上空に当たらない例も示しています。


また、無人航空機の飛行が終了するまでの間、無人航空機の飛行に関与しない者 ((1)の「第三者」)の態様及び飛行の形態が以下のいずれかに該当する場合は、無人航空機が第三者上空にあるとはみなさないこととする。
 

1「第三者」が遮蔽物に覆われており、当該遮蔽物に無人航空機が衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合(当該第三者が屋内又は車両等(移動中のものを除く。)の内部にある場合等。)


2「第三者」が、移動中の車両等(無人航空機が当該車両等に衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合に限る。)の中にある場合であって、無人航空機が必要な要件を満たした上で審査要領5-4(3)c)カ)(iii)に規定されるレベル 3.5 飛行として一時的に当該移動中の車両等の上空を飛行するとき。


ただし、「第三者」が遮蔽物に覆われず、無人航空機の衝突から保護されていない状況になった場合には、無人航空機が「第三者上空」にあるとみなされる点に留意すること。

 

1については、第三者が屋内にいる場合や移動中ではない車両等に乗っている場合が該当するようです。だだし、立入管理措置が講じられていない家屋や停止中の車両等の上空の場合は、第三者が出てくる可能性があるため第三者上空に含まれると考えられています。


2については、道路や鉄道などの一時的な横断に限って、自転車やオートバイ等ではないルーフで覆われた自動車やバスなどドローンが落下しても第三者が保護される状態にあって、レベル3.5飛行の場合に限り、第三者上空から除外されるということになります。


レベル3.5飛行は昨年12月に新設された制度で、機体に搭載したカメラによって飛行経路下に歩行者等がいない無人地帯であることを確認して飛行します。

「無人地帯での目視外飛行」(レベル3飛行)に該当するものの、従来必要だった補助者の配置や看板の設置といった立入管理措置を一定の要件を満たすことで撤廃する飛行制度で、「みなし立入管理措置」とも表現されています。


レベル3.5飛行については別の機会に改めて取り上げたいと思います。


以上のことから住宅や駐車中の車の上空を飛行する場合、立入管理措置を講じなければならない点に注意が必要が必要です。(カテゴリーⅢ飛行を除く)

現実的には広範囲の飛行は難しく、限られた範囲での飛行になると考えられます。


改正された運用解釈では、どこまでが「目視」飛行に当たるのかだったり、「催しもの・イベント」の具体例や「物件投下」に当たらない例、「立入管理区画」の考え方なども明示されています。


ドローンを飛行させる前に目を通し、理解してから飛行するように心がけましょう。「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」もぜひ確認しておきましょう。